『ノルウェイの森』を読んで

 先日、「中国の学生には『ノルウェイの森』人気 村上作品に共感」(2009/03/12、朝日新聞)という記事を目にしました。中国の都市部の大学生の半数以上が村上作品を読んでおり、なかでも『ノルウェイの森』が人気があるそうです。わたし自身は村上作品を読んだことがなかったのですが、この記事を見て『ノルウェイの森』を読んでみようと思いました。ドストエフスキー好きのわたしにとって、村上春樹自身が好きな本3冊のうちの1冊に『カラマーゾフの兄弟』を挙げていることも、この作品を読もうと思うきっかけとなりました。
 これは、1960年代末の大学紛争時代の東京の(エリート、おそらく)大学の学生の恋愛物語で、そのなかに、大学生の日常生活(寮生活、大学の講義など)、身近に起こった死(自殺)とそれに飲み込まれてしまった主人公の憂鬱、などが織り込まれています。
 わたしは、大学紛争に対する批判、とりわけ紛争に参加する男性の女性支配に対する批判には、大いに共感できました。でも、性欲やセックスについては、受け入れられませんでした。この小説は男性の目線から書かれているなあとつくづく思います。例えば、性欲処理のために男性が見知らぬ女性とセックスすることを(ある意味で)主人公は正当化しているのですが、それはいかがなものかと思います。それに、小説では省いているだけだと思いますが、男性側がしっかりと避妊しているのかも心配になります。それから、友人とのセックスについても疑問に感じます。わたしが古臭いのかもしれませんけれど、パートナーとして大事にしようという覚悟もないのに、セックスすることは許されないと思います。単なるスキンシップとして、友人との親交を深めるためにセックスするということは、あり得ないと思います。もっと違う小説の読み方があると思いますが、今回、わたしはこんな感想を持ちました。