「うたおう 子どもの権利」条約批准から10年(2004.4.26.朝日新聞東京版朝刊)を読んで

 国連の「子どもの権利条約」を日本が批准して10年になるのを記念して、2004.4.8.に朝日新聞社主催による「うたおう 子どもの権利」と題するフォーラムが開かれました。日本では2004.4.7.に改正児童虐待防止法が成立したばかりということもあって、児童虐待防止に関する議論が展開されたようだ。(参加者はフランスのプレシー村村長のイブ・デュテイユさん、パネリストは衆議院議員水島広子さん、作家の重松清さん、ジャーナリストの筑紫哲也さん)なお、改正児童虐待防止法では、法律の目的に「児童の人権」という言葉が入り、さらに虐待の早期発見や通告はもちろん虐待を受けた子どもの自立を支えるということも明記され、虐待をした親たちへの指導や支援も法律に盛り込まれました。この法律は2004.10.に施行されます。
 私は、フォーラムでの重松清さんの発言に共感しました。高度経済成長期に親となった世代は、子どもにはおなかいっぱいにご飯を食べさせよう、学歴をつけさせよう、という自分たちが達成できなかったことをわが子に実現させるという幸せがあったけれども、現代の親たちは、何が幸せかわからないまま大変な子育てをしており、楽しみを見つけずらくなっている、という発言です。幸せとは何なのかは人類始まって以来の難問だと思うのですが、高度経済成長期にはかなり画一的に単純化されていたのかもしれないと私も思います。その上、現代は価値観が多様化し、育児への貢献が評価されにくくなっているように思います。親になっても「自分らしく」とか「夢を実現せよ」という無言の圧力があると思うのです。
 「幸せ」とは何かを探すことは難しいですし、一生かかって探すことなのかもしれません。でも、育児への貢献を評価すること、そして家族や社会による育児支援を充実させることが必要だと思います。もちろん、虐待の早期発見や保護・支援は何よりも大事だと思いますし、私はそれだけでなく、ドメスティック・バイオレンス(夫婦・カップル間等の暴力)の早期発見、保護・支援も重要だと考えています。児童虐待の背景にはドメスティック・バイオレンスが潜んでいる場合もあるからです。
 最近、児童虐待が増えていると報道されることが多いですが、実際に今までにないほど児童虐待が増えているのかはわかりません。児童虐待が注目されるようになったため、相談件数や検挙件数が増加しているのかもしれません。また、2003年の警察庁の調べでは、児童虐待で検挙された人は、実母、実父、養・継父が多いそうです。家庭内の密室育児が児童虐待の原因と言われることもありますが、検挙された人は、実母よりも実父あるいは養・継父が多くなっています。その背景には、ドメスティック・バイオレンスなどがあるかもしれません。私は今後とも、児童虐待ドメスティック・バイオレンスに注目していきたいです。