タレントの向井亜紀が米国での代理出産に三度目の挑戦で成功(2003.11.)

 向井亜紀は2000年、子宮けいがんのため、妊娠を継続させれば余命半年と診断され、泣く泣く胎児と子宮を摘出した。しかし、自らの遺伝子を受け継ぐ子どもを産むために卵巣は残し、米国人女性に代理出産を頼んだ。向井の卵、向井の夫である元プロレスラー高田延彦精子を受精させて受精卵をつくり、それを米国人女性の子宮に戻して妊娠させるのだが、こうした代理出産は成功率が高くない。3度目の挑戦、2人目の代理母でやっと成功し、向井と高田の遺伝子を持つ双子が誕生した。
 代理出産することに喜びを見いだす米国人女性が存在することが、私には理解しがたかった。他人の受精卵を子宮の中に入れて出産まで育てることは、どういう事なのだろうか。それに出産にはリスクがある。とりわけ双子を産むとなれば、代理母の身体には大きな負担がかかるだろう。
 さらに、代理出産の成功率は低いために何度もトライしなければならない。だから、依頼するカップルはもちろん、代理母に対する心身のケアも重要である。膨大にかかる代理出産の費用および渡航費・滞在費。日本で認められていない代理出産を米国など海外で行なうとなれば、お金がないと難しい。また、「借り腹」は倫理的な問題もある。そこまでして、自分たちの遺伝子を受け継ぐ子どもにこだわるのはなぜなのか。日本では代理出産日本産科婦人科学会で認められていないが、もし認められたならばお金の問題は解消するだろうが、安全面や倫理面の問題はなくならない。
 向井の代理出産には賛否両論がある。私のような慎重派だけでなく、癌の再発のおそれのある向井の、そして子宮を失った女性でも自分の遺伝子を持つ子どもを産む権利があると主張する向井の、勇気ある行動とみる賛成論もある。しかし、産んだ女性が母親であるという日本の慣例に従って、双子の子どもたちは依然として向井夫婦の戸籍はおろか住民票にも登録されていないようだ。何はともあれ、向井夫婦は、代理母夫婦、双子の子どもたちとどのような家族関係を築いて行くのだろうか。私は今後とも注目していきたい。
(2004.1.23.「金曜エンタテイメント 逢いたかったわが子よ」(関西テレビ)、向井亜紀著2004.1.『会いたかった―代理母出産という選択』幻冬舎向井亜紀オフィシャル ウェブ サイトhttp://www.mukai-aki.com/、参照)