朝日新聞「非嫡出子の相続差別、救済を」を読んで考えたこと

 朝日新聞(2004年10月15日、37面)の記事によると、最高裁判所第一小法廷で10月14日に、非嫡出子(婚外子)の相続分を嫡出子(婚姻関係の夫婦の間の子ども)の半分としている民法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反するかが争われた訴訟の上告審判決がありました。判決は、これまでの判例を踏襲して非嫡出子差別は「合憲」でした。しかし、5人の裁判官のうち、弁護士出身の才口千晴裁判官と職業裁判官出身の泉徳治裁判官の2人が「違憲だ」とする反対意見を述べました。同小法廷は、2003年3月にも同種の訴訟を担当し、その際も「3対2」で合憲判断を出したそうです。
 才口裁判官は、非嫡出子か嫡出子かは「自分の意思ではどうにもならない出生による差別」であり、「法改正を待つまでもなく、司法においても不利益を救済する必要がある」と述べたといいます。私も才口裁判官の意見に賛成です。非嫡出子であっても嫡出子であっても、親子であることに何ら変わりがありません。
 また、非嫡出子と嫡出子の線引きも難しいと思います。例えば、現在は両親が離婚している場合でも、両親が婚姻関係を結んでいる間に生まれた子どもは嫡出子とされますが、両親が結婚せずに子どもを産んだ場合には、その子どもは非嫡出子とされるのです。子どもを産んだ時に結婚していたかどうかが、分かれ目です。
 さらに私は、たとえ不倫によって生まれた子どもであっても、親子関係は確立されるべきであって、そのために子どもが不利益を被ってはならないと考えます。子どもは、不倫カップルの間に生まれるか、婚姻夫婦の間に生まれるかを選べないからです。
 1960年代以降、欧米諸国では非嫡出子差別は撤廃されてきました。それなのに、日本では現在もまだ非嫡出子差別がなくならないのはなぜでしょうか。また、現在の政治家たちは少子化対策に躍起となっていますが、非嫡出子を差別するのはどうしてでしょうか。もちろん、少子化対策と非嫡出子差別撤廃は、次元が違う問題です。でも、全く関係がないとは言えません。婚外子差別がなくなれば、結婚していないという理由で妊娠中絶される子どもが救われる可能性もあるのです。日本では、未婚カップルに子どもができた場合、「できちゃった婚」をするか、あるいは何らかの理由で結婚できない場合には、不幸にも妊娠中絶が選ばれる場合が多いと聞きます。そして、最近は、十代の若者の妊娠中絶件数が増えています。だから、子どもを増やしたいと真剣に考えるならば、結婚していようが、いまいが、生まれた子どもは平等に扱われるべきです。「正しい結婚」や「正しい家庭」の観念を普及させたいのはわかりますが、そのために婚外子を差別するのはおかしいです。