夢の技術か?「思う」だけで「行動」(朝7時NHKニュース)

 今日の朝7時NHKニュースで、操作者が「思っただけで」その通りに機械が動く、という新しい技術が紹介されました。紹介された事例は以下の二つです。
・「手の指を動かしたい」と思うと、機械で作られた手の指が動く。
・多人数同時参加型コミュニティネットワークソフト「セカンドライフ」のキャラクターが、操作者が「思う」通りに動く。例えば、直進せよと「思う」と直進する。
 この技術は、手足等が不自由な人のために役立つ新技術だと紹介されたようです。これまで障害ゆえに不自由を被ってきた人びとにとって朗報に違いありません。「思う」だけでその通りに機械が動くのであれば、何と便利なことでしょう。
 でも、「思う」即「行動」という技術の「負」の側面が私は恐くてなりません。利用の仕方によっては、この技術は、恐ろしいこと、何か犯罪のようなものに繋がる可能性を秘めているように私は思います。
 ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟』を読んだでしょうか。この小説では、次男のイワンは「父を殺したい」と願望し、イワンを慕う下男のスメルジャコフが実際に手を下します。そしてイワンは、殺人幇助の嫌疑を自らいだき、狂気に陥るのです。でも、イワンは殺人の実行犯ではありません。私は「思う」ことと「行動」は明らかに違うと思うのです。
 今朝NHKで放送されたこの新技術に則して言えば、イワン(操作者)が「思い」、スメルジャコフ(機械、キャラクター)が「行動」したとなります。もしも、イワン自身がこの技術を利用(悪用)していれば、イワンが「思う」→イワンが「行動」となったのかもしれません。こんな恐ろしいことがあるでしょうか。
 日々の生活のなかで、どんな善人であっても、多かれ少なかれ、「悪い」ことをしたいと「思う」瞬間があるでしょう。もちろん、現実の生活では、「思う」ことと「行動」との間には何重ものクッションが横たわっており、「思う」けれど「行動」しない場合も多いと思います。もしも、「思う」即「行動」となれば、おそろしい世の中になるのではないでしょうか。新技術を開発する際には、「負」の側面も検討してほしいと切に願います。